令和5年10月1日から消費税のインボイスが導入されました。インボイス(適格請求書等)は消費税の納税額の計算上、売上にかかる消費税から仕入等にかかる消費税を差し引く仕入税額控除のために保存が必要です。
インボイスの保存は差引計算で消費税の納税額を計算する本則課税では大問題ですが、売上にかかる消費税に、その売上が該当する事業の種類ごとに定められたみなし仕入率をかけて消費税の納税額を計算する簡易課税制度を選択している場合には、消費税の計算上、インボイスの保存は不要です。
一方、令和6年1月1日より電子取引データの電子保存が義務化されます(正確には義務化の猶予期間が令和5年12月31日で終了します)。
これは消費税が差引計算(本則課税)であるか簡易課税であるかに関係なく、さらには課税事業者か免税事業者かも関係なく、すべての事業者の義務となるところです。
具体的には、電子メールに添付されて送られてきたり、他社のウェブサイトからダウンロードした請求書や領収証は、電子データの形で保存しなければなりません。
さて、このように電子取引データといっても、注文書や支払通知書を電子データで交付する大企業とは直接取引がなく、備品をamazonで買うこともない事業者には関係がないことだと思われがちです。
しかし、ここに落とし穴がありました。
東京電力です(中部電力や関西電力でも同じ。ENEOSでんきやソフトバンクでんきならなおのこと)。
最近の電力会社の請求書・領収証は黙っていると電子データです。
一口に東京電力といっても、現在は持ち株会社制になっていて、持ち株会社、東京電力ホールディングスの100%子会社である東京電力パワーグリッドが送電・配電を、東京電力エナジーパートナーが小売電気事業を担っています。
したがって、私たちが電気を買っている東京電力は、東京電力エナジーパートナー株式会社ということになります。TEPCOというのはグループの総称のようですね。
電気の購入も消費税のかかる取引(課税仕入れ)ですので、10月1日以降の取引について消費税の差し引き計算(仕入税額控除)をするためにはインボイス(適格請求書等)を受け取って保存しておかなければなりません。
消費税の簡易課税選択事業者でも免税事業者でも法人税や所得税の関係で保存義務があります。
東京電力エナジーパートナー株式会社(長いので東京電力と書きます)は、原則としてインボイスをインターネット上の会員サイトで発行します。
当社のインボイス発行方法のご案内|東京電力エナジーパートナー株式会社 (tepco.co.jp)
電気購入者はインボイスをそこからダウンロードして保存することになります。
会員サイトというのは、法人(会社)の場合は「ビジネスTEPCO」
ビジネスTEPCO | 東京電力エナジーパートナーの法人・事業者さま向けWebサービス、
個人の場合は「くらしTEPCO web」
で、利用するには会員登録が必要です。そして、会員登録にはメールアドレスが必要です。パスワードも考えてください。
平成28年4月1日の電力の小売り自由化以前の契約(従量電灯Bなど)で電気の供給を受けている場合は、会員サイトに登録しなくても「Web検針票」のサイトからインボイスをダウンロードできるそうです。
利用方法のご案内|Web検針票|東京電力エナジーパートナー株式会社 (tepco.co.jp)
電気の契約のときに登録した電話番号に認証番号が送られてきて、これを入力することで本人確認されますので、固定電話を登録してある場合には電話の近くにいなければなりません。
東京電力のインボイスのダウンロードは1回しかできません。
ダウンロードしたデータが行方不明にならないように、また、間違えて消去してしまわないように気を付けてください。
amazonのように再発行はありません。
最初に書いたように、令和6年1月1日から電子データによる請求書、領収書等は電子データでの保存が義務付けられますが、ダウンロードしたインボイスも電子データでの保存が必要です。
ジョブカン電子帳簿保存などのサービスを利用しましょう。
もっとも、前々年の売上高が5,000万円以下の事業者であれば、電子データ保存について検索機能が不要とされましたので、そのような方はパソコンに「東京電力」などのフォルダーを作ってそこに保存しておけば良いです。
とはいえ、パソコンが壊れたら大変ですので、OneDriveなどに常にバックアップを取っておきましょう。
ここまで東京電力の電子インボイスを入手する(ダウンロードする)方法についてご案内してきましたが、実は書面(紙)のインボイスを発行してもらうこともできるのです。
書面のインボイス(電子インボイスを印刷したものではないことに注意)なら、そのまま保存しておけば良いです。
電力小売り自由化以後の契約(スタンダードSなど)の場合で、コンビニなどで支払っている場合は払込用紙に付いている請求書がインボイスです(実物を確認しました)。
但し、請求手数料が毎月220円かかります。
口座振替・クレジットカード払いの場合はカスタマーセンターに電話してインボイスを郵送してもらうように頼むことができるそうです。こちらは毎月110円かかります。
一方、自由化前の契約(従量電灯Bなど)の場合は振込用紙・検針票はインボイスではないそうです。
(以下引用)“書面のインボイスが必要な場合は、インボイスの要件を満たす検針票を再発行いたしますので、カスタマーセンターへお電話でご連絡ください。なお、毎月インボイスの要件を満たす検針票をご希望の場合は、都度ご依頼が必要です。”(引用終わり)
書面のインボイスがほしい | 東京電力エナジーパートナー (zendesk.com)
ということですが、毎月電話しなければならないのでしょうか。私のお客様で、カスタマーセンターに電話して頼んだという方がいますので、様子を見てみます。こちらは料金がかからないようです。
電気料金の支払いは口座振替が一般的だと思いますが、東京電力の事務のデジタル化により、数年前から書面の請求書が発行されなくなりました。
また、通信機能を備えたデジタルメータへの置き換えにより人手による検針がなくなって、検針票・口座振替領収証も受け取れなくなりました。
しかし、インボイス制度の導入や電子取引データの電子保存の義務化により、皮肉にもかえって書面の請求書・領収証への要望が高まることになりそうです。
東京電力から請求書の電子化の案内があった当時「紙の請求書がないと先生(税理士)が困るでしょう」とおっしゃって、東京電力に書面の発行を手配してくださったお客様がいらっしゃいます。
それから数年、まさにそのとおりになったといえます。
私は今、税理士としてお客様に「東京電力に電話して、請求書を紙でもらうようにしてください」とお願いしています。
一方、私自身は「くらしTEPCO web」に登録しました。これはこれで、一度会員登録さえしてしまえば、電力使用量のグラフを見ることができるなど、便利です。
また、「Web検針票」なら会員登録がなくてもインボイスのダウンロードができますので、パソコンが使えればこれがおすすめかなとも思います。
法人向けの「ビジネスTEPCO」では、複数の電気使用場所をまとめたインボイスのダウンロードができるようです。複数の使用場所がある場合には、書面の請求書よりも事務が楽になるかもしれません。